
村田喜代子・著『耳納山交歓』。
「じのうさんこうかん」、とよみます。
耳納山の山奥にセカンドハウス用の簡単な住宅地が作られ、10軒ばかりの家が売れ、ささやかなコミュニティ(「キクラゲ村」と名づけられます)が生まれ、物語が始まります。
彼ら(ほとんど中高年のひとばかり)はやがて、自分たちのほかに誰も住む者はないと思っていた山のなかに、もうひとつの村、「ヒラタケ村」があることを知り…。
ヒラタケ村の人たちは、まるで時代を数十年もさかのぼったような暮らしをしているのです。
家族皆で田畑を耕し、こどもたちは学校も知らず、電気もガスもなく…。
その素朴な生活の滋味みたいなものに、キクラゲ村のものたちはしらずしらず魅せられ、ささやかな交流がはじまります。
やがてその謎の村の住人たちの正体がおぼろげにわかりかけながら、物語は終わります。
だいたい「人でないもの」たちなんだろうということは察せられているのですが、彼らはあまりにも人間くさく、存在感があり、生き生きとあかるい。
キクラゲ村のひとたちも、仕事をリタイアして移ってきたような者や、絵描きだったり陶芸家だったり、どこか世間擦れしないみずみずしさをもったところがある人たちで、謎の村についていぶかしむよりもあるがまま受け入れて親しく交わる方向へ自然にむかっていく…その、ゆとりというか素直さというか、なんか良いのです。
出会った誰かとこころを通わせること。
こんなふうに自然体に出来たらと、思う。
ヒラタケ村の長老がおしまいに言った言葉が、じわっと胸に残ります。
なんのてらいもない、普通の言葉ですけれど。
テーマ : 読書記録 - ジャンル :
小説・文学